G「固定資産」と「消耗品費」の区分を理解しよう

「減価償却費」の計算をする前に、パソコンを例に「固定資産」と「消耗品費」について説明しましょう。
パソコンには、性能の違いにより8万円で買える物もあれば、40万円する物もあります。
また、デスクトップの本体だけ購入する場合もあれば、モニターとセットのお買い得品を購入する場合もあります。

購入金額で取り扱いが異なる

購入した資産1セットの取得価額で、次のように取り扱いが異なります。

取得価額 取り扱い
10万円未満 償却することもできるが、一般的には「消耗品費」として経費にする。
20万円未満 耐用年数で償却するか、一括償却資産として3年で均等に償却する。
あるいは、一時に経費処理する少額減価償却資産の特例を適用する。
30万円未満 耐用年数で償却するか、取得価額を一時に経費処理する「少額減価償却資産の必要経費算入の特例」を適用する。
30万円以上 耐用年数で償却する


「中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」

中小企業者の青色申告者で、平成20331日までの間に、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合には、
その取得価額を業務の用に供した年分の必要経費に全額算入できます。

この特例の適用を受ける場合には、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の欄に、
適用を受けた取得価額の合計額等を記載します。

1841日以降は、年300万円が限度額になります。


実際には次のように記入します。
 (税務署から郵送されてくる「青色申告の決算手引き」のP4を転載しました。
  この手引きには意外と?役に立つことがコンパクトにまとめられて参考になりますので
  しっかりと読んでおきましょう。)
  




パソコンを例に考えてみると

8万円のパソコン本体のみ購入・・・「消耗品費」で8万円経費にする。

15万円のパソコンを購入・・・

耐用年数4年で償却する。

一括償却資産として 15万円×1/3=5万円 を経費にする。

少額減価償却資産の特例を適用し、15万円経費にする。(青色申告者)

 25万円のパソコンを購入・・・

    耐用年数4年で償却する。

    少額減価償却資産の特例を適用し、25万円経費にする。(青色申告者)

 35万円のパソコンを購入・・・

    耐用年数4年で償却する。

     定額法だと、35万円×0.9×0.25×使用月数/12月=78,750円(1年)

償却するか一時の経費にするか?

一般的には、できるだけ経費に算入できるのが有利ですが、

事業開始初年度で多額の所得がないなど、翌年度に経費を繰延べたほうが節税になることもあります。

個人所得税は累進税率ですので、所得金額が増えるほど税率が上昇します。

所得金額と税率の兼ね合いも検討し、今年度経費をいくらにするか、どの方法を選択するか考えましょう。

   所得金額330万円未満・・・所得税率10%

   所得金額330万円以上900万円未満・・・所得税率20%


資産1セットとは

固定資産になるか経費になるか判断する「取得価額」は、購入した資産1セットごとの単価になります。
例えば・・・
・デスクトップ本体とモニターのパソコンセットを購入した場合には、
それぞれに値段が付いていたとしても、一緒に使用するのであれば1セットと判断します。

・応接セットのテーブルとイスも1セットと考えます。
   ・車とカーナビを同時に購入した場合には、カーナビだけを「備品」とはせず、車本体と供に償却します。


業務のように供した資産とは

その年に経費に算入できる資産は、その年に業務の用に供していなければなりません。
1229日に電気店で購入したパソコンが、14日に納品された場合には、
12
月中に使用していませんので「経費」にはなりません。


1229日の仕訳

借方

貸方


摘要

勘定科目

金額

勘定科目

金額

前渡金

94,500

現金

94,500

Y電気店 パソコン代








14日の仕訳

借方

貸方


摘要

勘定科目

金額

勘定科目

金額

消耗品費

94,500

前渡金

94,500

Y電気 パソコン納品

  

  








消費税の取り扱いと取得価額の判定

税込み経理方式を適用している場合には、税込み金額で判断します。

税抜き経理方式を適用している場合には、税抜き金額で判断します。

98,000円(本体価格)+ 4,900円(消費税)= 102,900円 の場合

 税込み経理の取得価額 102,900

 税抜き経理の取得価額  98,000